宅建業免許

宅地建物取引業者免許の申請

 
 (1)宅地建物取引業とは
 (2)宅地建物取引業法(宅建業法)上の「宅地」とは
 (3)不動産賃貸業等
 (4)宅建業免許について
   ①人=宅地建物取引士(宅建士)について
   ②人=政令使用人について
   ③人=欠格事由について
   ④物(場所)=事務所について
   ⑤お金=営業保証金・弁済業務保証金分担金について
 (5)宅建業の報酬
 (6)宅建業免許の申請から免許証の受領まで(保証協会加入の場合)
 (7)免許申請の標準処理期間
 (8)免許手数料例
 (9)参考資料
 

 

はじめに

 

宅地建物取引業を営むには都道府県知事免許または国土交通大臣免許を取得しなければなりません。宅地建物取引における取引業者と購入者等(一般消費者)との関係はプロと素人との関係とも言えます。そこで、宅地建物取引業法では、宅地と建物の公正な取引により購入者等の利益を保護するための必要な免許制度と規制を定めています。
 
このホームページでは、宅地建物取引業を行うための免許制度の内容、免許取得のための要件・手続きについて関連する規制内容と併せて説明しております。
 

宅地建物取引業とは

宅地建物取引業(宅建業)とは、「宅地」又は「建物」を不特定多数の人に反復継続して業として売買・交換及び売買・交換・貸借の媒介・代理を行うことを言います。即ち、取引形態は①自分のための<売買・交換>と②他人のための<売買・交換・賃借>の<代理・媒介>となります。
 

宅建業者の媒介と代理
媒介 代理
・契約は双方の当事者間で結ばれる。
即ち、媒介者(業者)は双方の当事者(売主と買主)を引き合わせるだけであり、契約の当事者にはならない。
・代理人が契約の当事者となる。
即ち、代理人が依頼者(売主又は買主)に成り代わって契約を結ぶ。
・但し、契約の効果は依頼者に帰属する。

 
国土交通省の都道府県へのガイドラインでは、宅地建物取引業に該当するかは以下のような事項を参考にして総合的に判断するとしています。
 ①広く一般の者を対象にする取引
 ②利益を目的とする事業
 ③転売目的で取得した物件の取引
 ④自ら購入者を募り一般消費者への直接販売
 ⑤反復継続的な取引
 

宅地建物取引業法(宅建業法)上の「宅地」とは

宅建業法では、「宅地」とは都市計画法が定める用途地域内の土地を言い、どのような目的で取引するかは問いません。したがって、用途地域内の農地を農地として使用するための売買であっても、「宅地」として扱うことになります。但し、用途地域内の道路、公園、河川、広場、水路は宅地扱いにはなりません。但し、これらを建物の敷地に供する目的で取引する場合には「宅地」扱いになります。
 
そもそも建物の敷地に供する目的で取引される土地は全て宅建業法上の「宅地」扱いとなります。例えば登記簿上の地目が田、畑、山林などであっても、その土地を建物の敷地に供する目的の取引であれば、全て「宅地」扱いになり、それを業として取引を行うのであれば宅建業免許が必要となります。
 
以上を図示すれば以下のようになります。
 

<用途地域外> <用途地域内>
建物の敷地目的取引=宅地取引 全ての土地取引=宅地取引
上記以外の土地取引≠宅地取引 公共施設(道路・河川・公園・広場・水路)
≠宅地取引
(但し、建物敷地目的取引=宅地取引
 

用途地域:都市計画法に基づく制度で、都市の環境保全、利便性増進のため建物の用途、建蔽率等を市町村・東京23区によって定められています。住居系用途地域、商業系用途地域、工業系用途地域の3種類があります。都心部の市街化地域では必ず用途地域が定められますが、郊外などの市街化調整区域では用途地域は原則定められていません。

 

不動産賃貸業等

①不動産賃貸業:自己の土地(更地、駐車場等)を地主として他人に賃貸し、又は自己の建物(アパート、マンション等)を家主として他人に賃貸する業は宅建業には該当せず、宅建業の免許は要りません。
 
②個人の土地の売却:
 ― 個人が自己の宅地を転居、相続などで売却するのは業ではなく、何の免許も要りません。
 ― 個人が自己の土地を自ら開発し、事業として不特定多数の人に宅地として分譲販売するのは宅建業となり
   宅建業免許が必要です。
 

宅建業免許について

宅建業法の規定により、宅建業を営むには都道府県知事の免許(1の都道府県に事務所設置)又は国土交通大臣の免許(2以上の都道府県に事務所設置)が必要です。
 
宅建業免許の有効期間は5年間です。更新のための申請書提出期間は有効期間満了日の90日前から30日前までの間です。
 
宅建業の免許の取得には、人・物(場所)・お金の3要素を満たす必要があります。
(1) 人=宅地建物取引士(宅建士)について
・宅建士:宅建士とは宅建業法に基づき定められている国家資格者であり、宅建業者が行う取引に対して購入者の利益の保護及び円滑な宅地・建物の流通に資するよう公正かつ誠実に法に定める事務(重要事項の説明)を行う不動産取引法務の専門家です。
 
・宅建士の設置義務:専任の宅建士は1事務所において業務に従事する者5名につき1名以上の割合で設置しなければなりません。マンションのモデルルームのような案内所で契約を締結するような場合は、従業者数に関係なく1人以上の設置で要件を満たします。
 
・専任の宅建士:宅建士は宅建業者の事務所の専任でなくてはなりません。即ち事務所に「常勤」し、「専属」しなければなりません。宅建業者との雇用契約など継続性も求められます。
 ― 通勤が不可能な住居地の場合、専任性が認められません。
 ― 他の会社の役員等との兼務は専任性が認められません。
 ― 当該宅建業者の監査役等の兼任についても専任性が認められません。
 ― 他の宅建業者の宅建士であった者が、退職していても変更届がなされていない場合は前職との兼務になり
  専任性が認められません。
 ― 名義貸しによる宅建士の設置は厳しく禁じられています。
 
・宅建士証:宅建士は宅建士資格試験の合格後、都道府県知事の資格登録を受け宅建士証の交付を受けます。宅建士証の有効期限は5年間で講習等の手続きを経て更新されます。
 
・重要事項の説明:宅建士は宅建業者の相手方に対して、宅建士証を呈示して、契約締結前に物件と契約内容に関する重要事項を記載した書面(重要事項説明書)を交付してその内容の説明を行なわなくてなりません。この場合、説明とは相手を理解させることであり説明書の棒読みだけでは義務を果たしたことにはなりません。さらに責任を明確にするため、宅建士は重要事項説明書、契約書に記名押印しなければなりません。
 
(2) 人=政令使用人について
・政令使用人とは宅建業法施行令第2条の2に定められている使用人で、事務所の代表取締役の代わりに事務所を代表して契約を締結する権限を与えられた常勤の使用人です。宅建資格は不要ですが、専任の宅建士が兼務することは可能です。
 
・本店(主たる事務所)に代表者が常勤の場合には、政令使用人の設置は不要ですが、他社の代表取締役を兼務するなどにより常勤でない場合には、別途政令使用人を設置しなくてはなりません。しかし、主たる事務所には専任の宅建士が設置されているわけですから、その宅建士に政令使用人を兼務させることもできます。
 
・従たる事務所においては、通常は支店長や営業所長が政令使用人になります。
 
(3) 人=欠格事由について
・法人の場合においては、役員や政令使用人(支店長等)に免許欠格者がいる場合には免許は申請時に拒否されます。宅地建物取引業法第5条の免許の「基準」の規定によるものです。
 
・同法第5条には、欠格事由が列挙されていますが、いくつかを具体例をもとに説明します。
 ― 犯罪の種類を問わず、禁固刑以上に処せられ、刑の執行が終わり5年を経過しない者は免許拒否要件に
  該当します。図示すると下記のようになります。

 
―執行猶予付の刑は執行猶予期間が終了すれば直ちに免許は可能になります。
 
―控訴、上告中の者は刑が確定しておらず免許は可能です。
 
―罰金刑でも、宅地建物取引業、暴力的犯罪(傷害罪、脅迫罪、暴行罪等)、背任罪の場合には刑の執行が
 終わってから5年を経過しないと免許欠格事由に該当します。
 
―その他には、不正・不当な行為をした者、そのおそれがある者、復権していない破産者、心身の故障により
 宅地建物取引業を適正に営むことができない場合などがあります。
 
(4) 物(場所)= 事務所について
宅建業法上の事務所とは、宅建業者の営業活動の場所として継続的に使用することができ、一般的に事務所と認識できなくてはならず、宅建業者が独立的かつ専属的に使用できる施設です。
― 月間契約のマンスリーオフィスは継続性の観点から事務所には不適です。
― 建物として登記できない簡易建築物も継続性の観点から事務所には不適です。
― 居宅の一部や同一フロアーへの同居はレイアウト次第では認められますが、厳格な独立性・機密保持性が
  求められます。
 
本店・支店: 本店において宅建業を営まない場合でも、支店における宅建業について何らかの管理・統括的機能を果たしていると考えられるため、本店も「事務所」として扱われます。その結果、2事務所を設置していることになり、①専任の宅建士の設置と②2営業所分の保証金や分担金の供託義務を負うことになります。
 
宅建業を営まない支店は事務所としては扱われません。
 
支店として登記されてなく、〇〇営業所、〇〇店の名称を用いて宅建業を営む場合でも、それらは「事務所」の扱いになります。
 
事務所の写真: 免許申請時に事務所の写真を添付しますが、商号の掲示板、事務机、応接場所、電話(固定)の設置写真が求められます。これらの備品は整えなくてはなりませんが、通常の事務備品であるPC, Fax, プリンター、コピー機、スキャナー、キャビネットなども必要になります。
 
尚、免許取得後、事務所には以下の設置が義務つけられています。
 ① 標識の掲示(宅地建物取引業者票:免許番号・免許有効期間・商号・代表者名・事務所の宅建士名・主た
   る事務所の住所)
   *案内所にも掲示が必要です。
 ② 報酬額の掲示(案内所には不要)
 ③ 帳簿の備付け(原則5年:取引年月日・物件の所在や面積・取引金額・報酬額)
 ④ 従業員名簿の備付け(10年)*従業者証明書の携帯も義務です。
 
(5)お金=営業保証金・弁済業務保証金分担金について
宅建業者は「営業保証金」を供託するか、または宅地建物取引業保証協会に加入して「弁済業務保証金分担金」を納入しなければなりませんが、これらはいずれも宅建業の免許を取得した後に行う手続であり、厳密には免許の取得要件ではありません。しかし、営業を開始する前には完了しておくべき手続きであり、免許取得時には配慮しておくべき事項です。
 
宅建業者と消費者との間でトラブルが発生した場合、宅建業者が消費者に損害賠償の責任を負うことがあります。しかし宅建業者に資力がなければ賠償責任を果たすことができません。そこで宅建業者が開業する前に、一定のお金をプールすることにしたのが「営業保証金制度」です。
 
しかし、宅建業における損害は多額になることが多く、営業保証金も多額になります。そこで宅建業者が集まって少額のお金を出し合い全体として多額のお金をプールする制度が設けられました。この宅建業者の集まりが宅地建物取引業保証協会であり、損害を弁済する制度が「弁済業務保証金分担金制度」といいます。この制度により多額の資金を必要とせず宅建業が開設できることになりました。
 

営業保証金制度 弁済業務保証金分担金制度
①主たる事務所:1,000万円
②その他事務所:500万円(1事務所)
①主たる事務所:60万円
②その他事務所:30万円(1事務所)
①金銭
②有価証券
③両者併用
①金銭
主たる事務所の最寄りの供託所に供託 保証協会に納付(協会経由で東京法務局に供託)
宅建免許通知から3か月以内に供託 事務所新設日から2週間以内に納付

 
*保証協会には①全国宅地建物取引業保証協会と②不動産保証協会がありますが、両協会とも上表の保証金分担金の納付以外にも協会入会金、年会費等が必要です。
 

宅建業の報酬

報酬は免許取得要件ではありませんが、宅建業ビジネスの収益源であり経営上も最重要項目の一つであり、十分な理解が必要です。
 
報酬に関する基本事項は以下のようです。
 ①報酬は宅建業者が他人のために媒介又は代理で売買・交換・賃借を成立させた場合に請求できます。
 ②宅建業者が自ら売主や貸主となった場合には報酬は請求できません。代金や賃料が収入となります。
 ③報酬額は所定の計算方式(下記)で算出されますが、それは報酬額の上限であり、その範囲内で報酬を
  請求することになります。
 ④代理での報酬額は媒介のそれの2倍の扱いとなります。
 
報酬額の計算式は以下のようです。

売買代金(消費税抜きの本体価格) 計算方式
200万円以下
200万円超え400万円以下
400万円超え
取引価格 X 5%
取引価格 X 4% + 2万円
取引価格 X 3% + 6万円

*計算例:
売買代金が600万円の場合の報酬額上限:600万円X 3% + 6万円=24万円
―この計算式による金額は媒介の場合の一方からもらえる上限額です。
①当事者双方の媒介では2倍の額が上限となります。
②代理では媒介の一方からもらえる額の2倍が上限です。
 
交換と貸借の場合
 ①交換:交換する高い方の金額で売買と同様に計算します。
 ②貸借:非居住用建物(事務所・店舗・宅地等)では媒介・代理とも依頼者双方からもらえるのは賃料の
     1か月分が限度です。但し、居住用建物では、一方からもらえるのは賃料の0.5か月分が限度です。
 

宅建業免許の申請から免許証の受領まで(保証協会加入の場合)


*国土交通大臣免許の場合は、申請窓口は県建築安全課ですが、免許通知、免許証の交付は国交省の地方整備局が窓口です。
 

免許申請の標準処理期間

免許の種類 処理日数(実日)
知事免許 約35日
国土交通大臣免許 約100日

 

免許手数料例

  ①埼玉県知事免許:33,000円(埼玉県証紙)
  ②国土交通大臣免許:90,000円(登録免許税)
 

宅建業免許申請に関する参考資料(埼玉県)

 「宅地建物取引業者免許申請の手引」(ウエッブ)には以下のような事項についての具体的な説明がなされて
 います。
  ・必要書類一覧 (P17)
  ・免許申請書例 (P25)
  ・事務所の写真指示-1 (P45)
  ・事務所の写真指示-2 (P46)
  ・事務所内写真指示 (P49)
  ・事務所内平面図指示 (P50)